06年世界一周クルーズ=33・サンフランシスコに寄港
6月23日。サンフランシスコが近くなったせいか水平線は霧で靄っていた。昼食後に美子さんと折り紙を始めたのだが、クジラ!という声に慌ててデッキに行く。4階のメインホールでは亀井教授のアメリカ史の講演の最中だというのに、出席しなかった連中はそのことをすっかり忘れて、ワイワイと講演会場に近い通路の扉を開けてデッキに出たり入ったり。ゴメンナサイ。
この日はイルカ、シャチ、クジラ、アザラシ、アシカ、海鳥などの姿を、心行くまで堪能した。夜の8時近くになっても海面をイルカの大群が飛び回る。左舷側も右舷側も大賑わいだった。サンフランシスコ入港にあわせて、食堂入り口を飾るペーパークラフトは真っ赤な大カニになっていた。甲羅にはなんと、坂を走るあの有名なケーブルカーの細密画が切り込まれている。

6月24日。朝6時。重く厚くたちこめる霧の中にかすかに橋桁が見えてきた。緞帳のように少しずつ霧が上昇してサンフランシスコはドラマチックに近づいてくる。ゴールデンゲートブリッジの下を通過。左手に、かの有名なアルカトラズ島がぼんやりと見える。
私たちが下船する35番ピアの建物の屋根の上で、はカモメが子育て真っ最中。巣や子どもは屋根の黒い色に同化して、目立たない。屋根を汚している白い色は親カモメとフン。カゼに飛ばされてきたような埃も白っぽい塊になっている。デッキからだと建物の屋根が目の前に見え、カモメとの距離があまりにも近すぎる。かわいいというより「不潔」という感情が先に立ってしまう。これから下りるサンフランシスコを暗示していなければ良いが・・・。
今回のクルーズでアメリカはニューヨークとサンフランシスコに寄港するが、夫は多分満足しているのだろう。どちらも彼が仕事で来た回数が多いところで、私にぜひとも見せたいといい続けていた町に寄港するからだ。タホ湖やグランドキャニオンも見せたいというが、「飛行機は苦手、絶対ダメ」という私は、先回も今回もツアーに申し込めないでいる。
入港は午前7時、朝食の時間と平行して入国審査が船上で行われたが、ニューヨークの審査の
ような厳しさはなく早々にすんでホッとした。だが、下船は9時ごろ、帰船は5時半までに、と例によってかなりせわしない。ニューヨークと同じく一日バスツアーに参加することにした。ツアー後に、有名なカニを食べにいけるか、ちょっと不安だった。自由に歩きたい夫はツアー参加に不満気だったが、「ツアーに参加した方がハイライトが見られる」という私の意見をしぶしぶ聞き入れてくれた。荘輔さんはカナディアンロッキーのオーバーランドツアーに出かけてしまったが、美子さんは私と同じバスツアーに参加した。船旅の魅力の一つは、途中でどちらかが船を離れても安心ということ。先回のクルーズでは私も、夫がセントアンドリュースでのゴルフツアーに参加したとき、船友の上田夫妻に付き合ってもらい、エジンバラの町歩きを楽しんだものだ。


さて、バスツアーだが、ゴールデンゲートブリッジ、サンラファエルブリッジ、ベイブリッジ、とサンフランシスコの三大橋を体験する。ツアーの最後にはフィッシャーマンズワーフを一とおり回って、またバスで船に帰るというコース。●シスコを一望できるツインピークス(あっという間に厚い霧が町を隠したり、見せたりしていらいらしながらも楽しい。頂上はあまりの強風で寒いくらい。夜景の美しさは有名)、●サウサリート(高級住宅地で芸術家も多く住んでいる。有名なフローティングハウスも興味深かかった)、●UCLAバークレー校を見学(私が留学するとしたら、先回のクルーズのとき見て回ったカナダのブリティッシュコロンビア大学に行き たい。UCLAの購買部では、学生たちのアルバイト店員が多く、丁寧で親切な対応にちょっと感激。学生街のコンビニや、Tシャツ専門店めぐりも限られた時間内ではあったが楽しめた)チャイナタウンには行かないが、昼食は中華料理店で。
フィッシャーマンズワーフは、もともとはイタリア人漁師の船着場だったそうだが、今は世界
中から観光客の集まる名所になっている。船が待つピア35までは歩ける距離なので、ツアー
から解放してもらって歩く。美子さんと別行動となった。夫はこれも観光名所のピア39でクラムチャウダーを買った。驚いた。両手に余るほど大きな丸いパンをくりぬいた中になみなみとクラムチャウダーが入っている。それを抱えてピアの2階デッキに上がった。サンフランシスコを象徴する建物が見えるウッドデッキのベンチに腰を下ろすと「うまい!最高!」を連発しながらあっというまに平らげてしまった。「一口、どうだ?」などという気はサラサラなかったようだ。私はここで有名なカニを必ず買う決めていた。どの店が良いかなと歩いてゆくと、東さん夫妻がオープンレストランに入るところに出会った。陸も海も、とにかく世界を知り尽くしているご夫妻が入る店なのだから味はきっと「うまい!」のだろう。私たちはその隣の店でカニを買った。広げた新聞紙の上にカニを置いたところで、ハンマーで「割って」もらい、カニミソは「そのまま残しておいて」もらう。カニミソは、黙っていると捨てられてしまうそうだ。アメリカ人と日本人の「一番美味しい部分」の感覚の相違が面白い。

ところで、サンフランシスコはゲイの町としても有名だ。特に明日はサンフランシスコ最大の祭り・ゲイのパレードがあるという。見たいと思うが、明日は海の上だ。プライド・パレードというらしい。人間としての誇りを持って世界に自分たちの存在をアピールするのだろう。パレードする道筋にはゲイのシンボルだという虹の旗や虹色の風船がはためいていた。観光バスの車窓からゲイのカップルを見かけた。「ほら、彼らもゲイですよ。あそこのカップルも、わかるでしょう?」現地のガイドが得意そうに教えてくれるのもサンフランシスコだからこそ、なのだろう。興味深かったのは、どのカップルも体つきが似たもの同士ということ。十年ほど前に読んだ本を思い出した。サンフランシスコを舞台に活躍する2人の刑事の物語。ひとりは妻帯者だが、もう一人はゲイで、相手は確か弁護士だった。刑事もマッチョなのだが、相手もマッチョに書かれていて、読んでいるときには違和感があったのだが、十年ぶりにその違和感が解消された。
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